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漢字検定の話


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 そのコとはデブどうし仲良しでした。



 おこづかいが消える!?

 アタシが今まででいちばん勉強したのは、高校や大学の入試でもなく、入社試験でもなく、漢字検定2級を受けた高校3年生の時でした。
 ウチのトーチャンは資格はいっぱいとりなさいというのが口癖だったので、学校であっせんしてくれる試験はたいがい受けていました。当時まだマイナーだった漢字検定でもどうぞどうぞ受けなさい受けなさいでした。

 ですがカーチャンは、やれ学校で模試がある試験があると言ってお金をかけてるのにたいして勉強してないアタシにイラついていました。で、こう言いました。
「漢字検定?受けてもいいけど落ちたら受験料こづかいからさっ引くからね」

 アタシのおこづかいは月5000円でした。当時漢検2級の受験料は4000円でした。月1000円ではマンガ部の月例カラオケ大会にも出られません。これはまずいことになりました。何としてでも合格しなければなりません。



 おさがりのテキスト

 漢検3級の時は国語の先生がくれたプリントだけで合格できましたが、2級はそれだけでは不十分だから自分でテキストを買ってねと言われました。
 そろばんやエレクトーンの試験では教室で買ったテキスト、漢検3級と英検3級も先生のプリントで勉強するのが当たり前だったので、自分でテキストを買って勉強をするというのは初めてでした。というか検定を受けるためにテキストを買うということを知りませんでした。それまで先生にオンブにダッコで自主性のカケラもなかったかよくわかりますね。

 さておこづかいもピンチなのでカーチャンに書籍代を出してもらえるか交渉したのですが、そこでラッキーなことがありました。
 その時来ていた幼なじみのアサカちゃんのママが「2級のテキストならアサカが買ったのがあるわ。全然勉強してないからキレイだし、おさがりで良ければあげるよ」と言ってくれました。
 アサカちゃんも「ワタシは挫折したから、その雪辱をトモちゃんに託すぜ!」と快く譲ってくれました。彼女のママが言ったとおり、開いた形跡さえないキレイなテキストでした。勉強しようよアサカちゃん……。



 ひたすら勉強

 かくしてタダでテキストをゲットし、おこづかいのためにカラオケ大会のために勉強を始めました。
 読み書きはわりとラクだったのですが、部首と四字熟語はかなり苦労しました。単語カードを作って学校の休み時間も読んでましたし、部室でもヒマそうな下級生を捕まえてテキストを渡し「ここから問題出して」と巻き込んでいました。ひでえ先輩ですね、アタシは。

 周りの助けもあって、過去問もあらかた解けるようになり、アタシは勝ちを確信しました。
 これならおこづかいは無事だ。カラオケ大会も行ける!



 泣きそうになった試験

 こうしてついに試験を迎えたのですが、なんということでしょう! 今まで勉強した四字熟語で出題されたのは「天衣無縫」のみ。あとは全然知らない言葉ばかりです。
 問題の形式は確か、ひらがなの選択肢を選んで、それを漢字に直して四字熟語を完成させる、だったと思いますが、選ぶ選択肢も当てずっぽうなら直す漢字も当てずっぽう。泣きそうになりました。
 しかも書き取りでは「靴を"履く"というボーナス問題でさえド忘れするしまつ。前日までの自信はどこへやら、すっかり意気消沈しました。あ、意気消沈も四字熟語だ。

 帰り道はおこづかいのことばかりを考えていました。でもトーチャンとカーチャンはよく言っていました。「一生懸命がんばって成績が悪いのは怒らないよ」と。今回は一生懸命勉強しましたから、きっとおこづかいはそのままにしてくれるでしょう。

 家に帰って「カーチャン、一生懸命やったけどダメだったわ」と4000円差し出しました。
 期待したアタシがバカでした。カーチャンはその4000円を「儲かった儲かった!」と自分のサイフに入れました。大人の言うことなんて信用してはいけないと学んだ瞬間でした。



 まさかの合格

 その月はカラオケ大会にも行けず、毎月部室で食べるおやつも買えず、かなり切なかったです。でもファミ通は買ってました。ボロは着てても心はゲーマーです。余談ですが当時の将来の夢はアスキーに入社してスタパ斎藤の弟子になることでした。我ながらイイ夢を持っていたと思います。

 ところが試験後2ヶ月くらい経ったところで、担任の先生が合格証書をくれました。





 マジっすか!?




 「トモコさん、かなり前に結果レポートあげたしょや」


 記憶にございません!


 「……まあいいや。とりあえず合格おめでとう」


 その日は授業が終わったら、部活にも出ずに速攻で家に帰り、ただいまの代わりにこう言いました。





 4000円返せ!



 今も残る謎

 アタシがいくら記憶力のあやしいヤツだといっても、先生にレポートまでもらって合格を知らされたのを覚えてないわけがない。先生は勘違いしていると、今でも信じています。

 考えられるのは、隣のクラスにアタシと似たような巨体のメガネがいたので、そのコと間違えた説。先生たちには本当にしょっちゅう間違われました。

 だけど担任が自分の受け持ちの生徒と隣のクラスのコを間違えるでしょうか? それに彼女はその時漢検を受けてませんでしたから、すぐに間違いに気づくでしょう。

 アタシがもらうはずだったレポートは誰が持っていったのでしょうか。あの時泣きそうになった四字熟語の点数はどれくらいだったのか、真相は闇の中です。



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この記事へのコメント:

トモコ : 2016/06/11 (土) 18:51:38

勉強の大切さって、学生の間は
なかなかわからないものだと思います。
学生の時に猛烈なガリ勉だったとしても
勉強の大切さをわかって勉強してたコは
あまりいないんじゃないかな?

ちなみに当時大人気だったエヴァやガンダムWが
マンガ部カラオケ大会の定番でしたが
アタシは空気読まず懐メロオンリーでした。
十八番は山本リンダの「狙い撃ち」!

WIND : 2016/06/11 (土) 18:17:21

漢検2級受験の中の物語、楽しませてもらいました。(笑)
学生の頃って、自ら進んで勉強しようという意識はさらさらなかったので、
テキストとか用意してくれる環境でも、試験に挑むのは凄いですよ~

まぁ、一概に言えませんが、もうちょっと勉強していたら、もうちょっとましな
人生が・・・・。(笑)

それにしても、なぜ間違えたのか、謎が残りますね。
でも、自分が思っている以上似ていると思われた経験が自分にもあります。
人生最大ダイエットを決意し、実行した最大の理由でした。

一番そうそうと感じたのは、「4000円返せ」です。
結構学生の時のこの金額って大きいですからね。
当時のカラオケの十八番は何でしたか?

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